USB 3.1 で接続を維持

1 インターフェースの進化

20 年にわたって広く利用されてきたユニバーサルシリアルバスは、将来を見据えた進化を遂げています。以前の世代の USB は、データインターフェースのみに対応し、デバイスへの電力供給機能は限られていました。USB 3.1 仕様を受けて、USB Implementers Forum (USB-IF) はその他のセクションについても見直し作業を行いました。

最も顕著な改善内容は USB Type-C コネクターで、裏表を迷うことなく差し込め、今後は新たな標準となると見込まれます。しかし、USB 3.1 の技術的な新機能とは何で、カメラインターフェースとして USB を使用するとどのような利点があるのでしょうか。そこで、USB の経緯をおさらいしてみましょう。

2 USB 2.0

IDS Imaging Development Systems GmbH は最初の世代の USB 2.0 カメラを 2004 年に発表しました。このとき、アナログカメラとフレームグラバーも、まだ広く使用されていました。デジタルカメラの場合、飛び抜けて長いケーブルを必要としない用途には FireWire が適していると考えられていました。

そうした中でも、IDS は uEye カメラ製品によって USB 技術が産業用途にも高い適性があると実証することができました。ロック可能なコネクターを持つ産業用ケーブルを使用して 20 台以上のカメラを 1 台のホスト PC に接続するシステムは、USB 2.0 でも可能でした。

その後、マシンビジョンユーザーが USB 2.0 技術の利点を認めるようになりました。多くの用途で、FireWire は徐々に USB と Gigabit Ethernet の組み合わせに置き換えられていきました。

3 USB 3.0

そして 2008 年、USB 3.0 規格が登場しました。HP、Intel、Microsoft などの企業で結成された USB-IF は、新仕様の最初のリビジョンを発表しました。USB 3.0 を搭載した最初のチップは 2009 年中頃に発売されました。これにより、400 MB/s を超えるデータレートが実現しました。

新規格の開発における主な目的は、次の機能によって、USB 2.0 の重大な制限を排除することでした。

  • データレートを増加して約 10 倍の 5 Gbps を達成

  • 接続したデバイスの電源管理の最適化

  • 以前の USB プロトコルで使用されていたポーリング手順の排除

  • 既存の USB インフラストラクチャを維持

この仕様の「アップグレード」によるマシンビジョンへの利点は明らかです。

  • 現在最も一般的な CMOS センサーを使用できます。出力データレートは USB 2.0、FireWire、GigE よりもはるかに高くなります。
  • フレームグラバーや専用高速インターフェースのない、安価な構成を使用する場合、USB 3.0 だけが高速センサーを実装できます。

IDS は他のカメラメーカーに先駆けて、初の USB 3.0 カメラを 2011 年に発表しました。

2015 年の Vision Systems Design のアンケートおよび Framos の市場調査では、USB 3.0 は最も急速に成長しているマシンビジョンカメラインターフェースと評価され、次点の GigE は長いケーブルが必要な用途向けです。 (Häussler, 2015)

「Vision Systems Design 読者のアンケートでは、USB 3.0 が最も一般的なインターフェースとして 1 位に選ばれました。今後 2 年間で最も普及するカメラタイプは何かという設問がありましたが、その答えはもちろん、USB 3.0 です」このアンケートでは、45 % が今後 2 年間で USB 3.0 が主流のカメラタイプになると回答し、30 % が GigE、14 % が 10GigE と回答しています。 (Carroll, 2015)

図1- VisionSystems DESIGN の調査結果: 2 年間で最も普及するカメラタイプ

カメラインターフェースとしての USB は、マシンビジョンカメラのメーカーとユーザーの双方に広く導入され、受け入れられています。

4 USB 3.1

しかし当然ながら、USB 規格と技術の開発はこれで終わりではありません。2013 年 7 月、Microsoft、Intel、Renesas といった常連企業が、「Universal Serial Bus 3.1 仕様」を完成させました。

 

それでは、USB 3.1 の新機能は何でしょうか。次の機能が挙げられます。

  • さらなる高速化
  • 新しいコネクターを搭載
  • より多くの電力伝達を実現

ただし、USB 3.1 では、帯域幅が高くなるとは限らないという点が異なります。紛らわしいですが、新しいリビジョン番号では、USB ユーザーにとって少し複雑になります。

表 1

表 1- USB 規格とパフォーマンス変遷の概略

USB 規格

基本機能

2016

USB PD 3.0

100 W

1996

USB 1.0

1.5 Mbit/s の「ロースピード」

1998

USB 1.1

12 Mbit/s の「フルスピード」

2000

USB 2.0

480 Mbit/s の「ハイスピード」

2008

USB 3.0

5 Gbit/s の「SuperSpeed」

2012

USB PD 1.0

7.5 W

2013

USB 3.1 (Gen1)

5 Gbit/s の「SuperSpeed」

2014

USB Type-C

リバーシブル

転送速度

USB 3.1 仕様は技術面で USB 3.0 仕様を置き換え、USB 3.0 および 2.0 との完全下位互換性を維持しています。さらに、現行の 5 Gbps または新しい 10 Gbps モードが可能になりました。2 つの性能レベルを区別するため、USB-IF では 2 つの転送速度を次のロゴで示しています。

USB 3.1 Gen 1 では、公式名は今でも SuperSpeed USB です。USB 3.1 Gen 1 と USB 3.0 の用語は同じであることに注意してください。

USB 3.1 Gen 2 では、公式な通称は SuperSpeed USB 10 Gbps ですが、非公式には SuperSpeed+ と呼ばれています。Gen 2 のデータ信号速度は、現在の USB 3.0 を使用した場合の約 2 倍です。そして実効データペイロードは、プロトコルレベルでの効率改善により、一層高くなります。

つまり、USB 3.1 は高速を実現できますが、必ずしも速度を増加させるのではありません。

コネクター

新しいコネクターについて紹介しましょう。近頃の技術誌を読むと、この新しいコネクターを備えた製品の特集が必ずといっていいほど掲載されています。

このコネクターはあらゆる製品に普及し、今後は PC 上の 1 つの汎用コネクターとなります。2015 年、アクセサリやディスプレイを接続するためのただ 1 つの USB-C コネクターを備えた Apple MacBook が出荷されました。現行の世代には 4 つの USB-C コネクターがありますが、他にコネクターはありません。現在 USB Type-C は、ケーブル、スマートフォン、タブレット、ハードディスク、モニター、ドッキングステーション、電源アダプター、ノートブック、デスクトップ PC、USB サムドライブなどに採用されています。

USB Type-C は実に優れたコネクターで、これまでで最高のコネクター仕様と言えるでしょう。

小型で高速、汎用性が高く、電力伝送率に優れ、そして何よりもリバーシブルです。これまでどれだけの人々が、USB-A プラグを正しい向きに差し込むのに 3 回も裏返して時間を無駄にしてきたことでしょうか。

高さはわずか 2.5 mm、幅は 8 mm 強と、現在の Type-A または Micro-B コネクターよりも小型なので、小型デバイスを構築できるというメリットがあります。

Type-C には 24 個のピンがあります。これは以前の USB コネクターの 2 倍ですが、すべてのケーブルでこの全部を使用する必要はありません。これらのピンは、USB 2.0 および SuperSpeed データバス、電力、接地、PD プロトコルのネゴシエーション用通信チャネルに使用されます。

図 2- USB Type-C 端子ピン配列の図

CC ピンと組み合わせると、コネクターは USB データ転送と電源供給に加えて、代替転送モードを提供できます。これを使用して、DisplayPort (DP Alt Mode)、Thunderbolt などのプロトコルに接続できます。

USB 3.1 デバイスに Type-C コネクターは必須ではありません。これは独立した仕様で、USB 3.1 デバイスに任意で使用できます。技術的には、USB 3.1 Gen 2 は以前の Type-A コネクターでも機能するのですが、幅広い可能性を秘めた Type-C は今後多くの場面で使用されるようになるでしょう。

その他の USB Type-C の新機能には、何があるでしょうか。USB のホストとデバイスの関係が、プラグと端子内の「CC コントローラ」チップによって実現されました。このチップを1 つまたは両方のプラグに埋め込んで組み立てられた Type-C ケーブルは「スマート」ケーブルで、一般には EMCA (Electronically Marked Cable Assembly) と呼ばれています。これらのケーブルは、ホストとデバイスの Type-C ポートに、通電容量、性能、ベンダー ID (USB Type-C ケーブル ID 機能) など、ケーブル特性を通知できます。これらのケーブルが最大 100 W の電力を供給できることを考慮すると、電気容量を正しく通知できることは非常に重要です。機能完備の USB Type-C ケーブルはすべて、Electronically Marked にする必要があります。

USB Type-C カメラを購入する場合、優れた品質のケーブルを信頼できるサプライヤから、理想的にはカメラメーカーから直接、手に入れてください。

パワーデリバリー

今度は、USB 3.1 に一般的に導入されている、3 番目の機能を紹介しましょう。それは、電力供給の強化です。USB パワーデリバリーも新機能ではなく、2013 年、USB 経由でバッテリーを充電するために 7.5 W の少量の電力を転送する規格として初めて導入されました。それ以来、PD 規格は拡張と改良を繰り返し、最新の仕様 3.0 は今年 3 月に発表されたばかりです。現行のパワーデリバリー仕様では、デバイスとホストの能力に応じて、最大 20 V で 5 A、すなわち 100 W の電力を通電できます。これはまとまった量の電力で、多くの用途にとって十分です。しかしながら、電動自動車の十分にはまだ足りません。

パワーデリバリーはType-C コネクターに必須ではありません。基本的に、パワーデリバリープロトコルをサポートしないデバイスで Type C コネクターを使用することは可能です。ただし、独立したデータと電力の役割を切り替えて最大限の柔軟性を実現できるのは、パワーデリバリープロトコルだけです。PD によって、モニターからコンピューターに給電し、コンピューターからカメラに給電できます。こうした個々のデバイスの役割は、操作中でもシームレスに切り替えられます。たとえば、1 つのデバイスのバッテリーが切れたり、電源から切断されりした場合などです。

PD はデュアルロールをサポートしており、両方の役割で機能します。つまり、ホストはデバイスに給電することも、デバイスからホストに給電することもできます。また、コンピューターとカメラの両方に、ディスプレイから給電できます。

5 マシンビジョンカメラのインパクト

これらの 3 つの優れた規格がマシンビジョンカメラにもたらす利点を、さらに詳しく見ていきましょう。

Type-C を搭載した新しい IDS uEye LE USB 3.1 Gen 1 モデルなど、カメラへ供給する電力が増加すると、多くのコンパクトシステムで電源の必要性がなくなるので、システム設計がより簡単になります。IDS は、ホストから十分な電力が供給されていればカメラ経由で 12 W を供給するカメラ製品のラインアップを発表します。今後のモデルでは、通電容量を増加する予定です。これはデバイスで照明を点灯する場合などには十分な電力で、システムのセットアップの複雑性を軽減し、コストを削減できます。

図 3

今後、SuperSpeed 10 Gbps へと転送速度が 2 倍になり、データペイロードがほぼ 1 GByte/s になると、センサーが非常に高速になり、さらに、RGB 形式でのデータ出力と、チャネルあたり 8 ビット以上のビット深度が可能になります。

図 3- USB 3.1 Gen 2 の転送速度によって高速化される、現行の 4 世代の CMOS センサーのデータ出力速度。

USB 3.1 の明らかな利点である Type-C コネクターとパワーデリバリーは、カメラ用途に大きな可能性を開きます。ただし、カメラビジョンのお客様には、もう 1 つの重要な関心事があります。それは、ケーブル長です。

基本的に、この点については以前の USB 実装と違いはありません。少なくとも、5 Gbps の速度に変更はありません。よくある誤解は、ケーブル長は USB 仕様によって制限されるということです。これは間違いです。実際、ケーブル長は指定されないと、仕様ではっきりと規定されています。しかし、電圧降下、信号立ち上がり時間、抵抗などの電気パラメーターは規定されています。また、一般的なケーブル材料で標準的に作成されるケーブル長も一覧されています。それでも、高品質の材料とアセンブリを使用した場合は、ケーブル長には何ら制限はありません。

USB 3.1 Gen 2 の速度を考慮すると明らかですが、ケーブルメーカーにとって、長いケーブルに対してすべてのパラメーターを満たすことはさらに困難になります。10 Gbps 信号については当初は 1 m または 2 m の短いケーブルが使用されると思われます。

USB 3.0 Micro-B ケーブルでは、最大 5 m または 8 m のパッシブケーブルを使用できます。USB 3.1 と USB Type-C について IDS は現在、長さ 3 m のケーブルを確認していますが、さらに長いケーブルもまもなく利用できるようになると予測しています。

Type-C で長いケーブルまたは光ファイバーケーブル (最大 100 m) を実装するもう 1 つの利点は、アクティブ EMCA を別の電子機器と使用して、データパスにリドライバーを追加して信号調節を行うことです。構成を通知したり信号調節を使用したりするアクティブケーブルは、「マネージドアクティブケーブル」と呼ばれます。

追加信号のための芯線が増えるので (Type-C プラグが両端にある機能完備のケーブル)、ケーブルの直径は多少大きくなります。ケーブルは、Type-C 対 Type-C (機能完備) と Type-C 対 Type-A プラグ (データ接続専用) の両方が用意されています。

それでは、Type-C は本当に産業用途に適しているのでしょうか。もちろんです。USB Type-C ケーブルはロック可能なコネクター付きや柔軟性の高いドラッグチェーンモデルもあり、小型ロボットに使用できます。

今年 3 月、USB IF デバイス分科会は USB Type C ロック機構付きコネクター仕様を公開しました。

このグループのメンバーは、Apple、Dell、Intel などの有名企業に属しています。仕様では、ねじ 1 本 (コネクターの上部) またはねじ 2 本による、USB Type-C の標準化されたねじ止め機構を規定しています。

図 4- ねじ 1 本と 2 本の USB Type-C ロック機構プラグ (Alysium-Tech GmbH、2016 年)

ケーブルメーカーは現在、ロック可能な Type-C プラグの最初のサンプルを準備しています。

図 4

6 まとめ

ここでは、次のような新しい用語と仕様を紹介しました。

  • USB 3.1 Gen 1 と USB 3.1 Gen 2
  • Type-C コネクター
  • パワーデリバリー

USB implementer's forum の狙いは、各デバイスの性能、電力、コネクター機能を別個にメーカーが明確に指定することです。このすべてをまとめると、現在利用できるすべての技術を搭載したカメラは、次のように名付けられるでしょう。

Type-C™ コネクターとパワーデリバリーを搭載した USB 3.1 Gen 1 カメラ

USB SuperSpeed カメラはすでに数多くの用途で使用されており、新しいマシンビジョンのデザインインへの採用は増え続けています。高性能カメラを必要とするユーザーは、高速インターフェースとフレームグラバーを搭載した消費電力が多くてかさばる高価なソリューションを選ぶ前に、まず USB 3.1 製品を検討してください。

USB 3.1 Gen 1 カメラを検討して USB Type-C モデルに今切り替えると、完全にシームレスな移行によって 2 年後にはデータレートが 2 倍になります。Type-C コネクター搭載の USB 3.1 カメラは、今すぐ利点を活用できるさまざまな優れた機能を確実に発揮します。

  • 400 MB/s を超える超高データレート
  • どのカメラインターフェースよりも優れたデータレートの対費用効果
  • ロック可能で汎用、リバーシブルのスーパーコンパクトコネクター
  • デバイスへ十分な電力を供給するパワーデリバリーで、ケーブル配線をなくし、コストと時間を節約
  • 言うまでもなく、USB 3.1 Gen 1 と Gen 2 は USB 3 Vision に完全互換
  • USB 3.1 はほぼあらゆる種類のデバイスを接続する可能性に富んでいるので、単一のユビキタスデジタルインターフェースになる

これらのすべての利点を兼ね備えたカメラは、すでに販売されています。2016 年の晩夏、IDS は、USB 3.1 Gen 1、新しい Type C コネクター、12 W のパワーデリバリーをサポートするハードウェアを搭載した新モデルをいくつか発表しました。

もう待つ必要はありません。未来の機能を手に入れましょう。USB 3.1 で接続を維持しましょう。