欠陥のない鋳造コンポーネント

自動車産業でのダイキャスト部品向け自動視覚検査システム

自動車産業では、アルミとマグネシウムの合金でできたダイキャスト部品の使用が増えています。車両が格段に軽量化されるからです。欠陥ゼロの品質を最低限のコストで達成することが、鋳造コンポーネントに必須の要件です。生産および加工の現場では特に、オートメーションは魔法の言葉です。画像処理を内蔵した VisionTools Bildanalyse Systeme GmbH (ドイツ) のシステムは、Ensenso 3D カメラを使用してそれぞれの鋳造コンポーネントの形状を記録し、状態と完全性を検査します。

用途

重量は、燃焼機関を搭載した車両の燃費を決める要因で、環境に有害な排気の放出量もこれに左右されます。代替駆動システムを持つ車両の場合、軽量構造なら電気モーター、バッテリー、その他のコンポーネントの重量を相殺できます。アルミニウムとマグネシウムの合金でつくられたダイキャスト部品は、死荷重が軽く、複雑な形状に成形でき、生産コストも抑えられます。これらの金属で製造された代表的なダイキャストとして、エンジン部品、トランスミッションハウジング、シャーシ部品、テールゲートフレームが挙げられます。不備のあるコンポーネントは誤作動やフォローアップコストの上昇を引き起こすので、組み込みの検査システムで各コンポーネントの完全性をチェックすると、部品の一貫した高品質を確保できます。同時にこのシステムは、除去後に生産ツールが完全に空になっているかチェックし、残っている材料や高圧によって次に充填したときに破壊されないようにします。

鋳造コンポーネントとセンサー間のわずかな隙間による熱応力

多くの場合、コンポーネントの形状試験は複数の光バリア、反射光スキャナー、誘導性センサーまたは同様のデバイスを使用して実行されてきました。これらのセンサーとコンポーネントの間にはわずかな距離があるため、加熱による高い熱負荷に加えて、部品が衝突する危険がありました。さらに、ダイキャストマシンのタイプやツールを交換するたびに、通常は既存のセンサーシステムの向きを変えたり拡張したりする必要がありました。

VisionTools 自動視覚検査システムは、画像処理を内蔵し、このような問題を解決します。生産ラインに直接取り付けて、鋳造コンポーネントの形状を、安全な距離から接触せずに録画できます。IDS の Ensenso N35 3D カメラを使用して、すべてのスプルー、キャストビーン、ランナー、チャネルまたはフィーダーの正しい状態と完全性をチェックします。

次に、画像分析ソフトウェア VisionTools V60 で評価が実行されます。コンポーネントのサイズと位置によって、すべてのビーン、スラッグ、スプルーのチェックに複数の画像が必要になります。このため、ロボットがコンポーネントを 3D カメラの前に設置します。画像撮影と評価は、コンポーネントの位置によって 0.3 ~ 1.2 秒かかります。タイプとテスト位置番号がマシン制御システムによって付与されます。

システムが管理できる製品バリエーションの数に制限はありません。VisionTools V60 画像処理ソフトウェアは、3D カメラを変更しなくても、タイプとツールの変更を実施できます。このために、ソフトウェアを使用して各コンポーネントまたはテスト位置に固有のテスト特性を 1 度定義します。これが現在のキャストコンポーネントの画像と比較されます。差異がある場合、システムからエラーメッセージが出力されます。これにより、時間がかかる改良作業、予定外のセンサー調整、長時間のダウンタイムの必要性がなくなります。

VisionTools では Ensenso N35 3D カメラを使用して、画像内のビーンを背景から区別します。しかし、一般には部品によって光沢特性は異なります。カメラはこの課題に対応できなければなりません。ステレオビジョンの品質は照明条件と検査対象の物体の表面テクスチャに直接的な影響を受けるので、「射影テクスチャステレオビジョン」手法を利用する Ensenso 3D カメラは特にこの用途に適しています。

スクリーンショット: グレー値レベルのランナービーンの 3D データ
マシン端末に表示された、鋳造部品の 3D データの検査結果

各モデルは 2 つの CMOS カメラとプロジェクターを使用し、撮影対象の物体 (この場合は鋳造コンポーネント) に補助パターンを投影します。これによって表面画像の精度が向上します。2 台の CMOS カメラは、異なる位置からそれぞれのコンポーネントを撮影します。両方のカメラが撮影した画像コンテンツは同一のように見えますが、評価対象のコンポーネント (エンジン部品やシャーシ部品など) の位置の違いによる差異が反映されます。カメラの距離と視野角、および光学機器の焦点距離がわかっているので、Ensenso ソフトウェアは三角測量によってこれらの視差を既知の長さに変換し、個々の画像ピクセルに対する物点の 3D 座標を決定できます。その後、加工される発泡樹脂部品の 3D 点群に統合します。これにより、奥行き情報の品質が向上するとともに、正確な測定結果を手に入れられます。

N35 モデルに内蔵された Flex View 投影テクノロジーにより、測定結果の精度がさらに向上します。光線のプロジェクターマスクの位置は、非常に細かいステップで直線上にシフトできます。その結果、コンポーネントの表面に投影されたテクスチャも移動し、再構成に役立つ構造が追加で作成されます。同じ被写体のシーンからテクスチャが異なる複数の画像ペアを撮影すると、さらに多数の画像点が生成され、解像度が向上します。 解像度に加えて、シフトしたパターン構造によって、光沢面、暗い表面、および反射面に追加情報が適用されるため、異なる表面上のデータの確実性も増加します。このようにして Ensenso N35 は顧客の要件を満たし、写真内のビーンを背景から区別でき、光沢特性が異なる部品の検査を確実に実行できます。

VisionTools のカメラベースの画像処理ソリューションにより、部品検査のエラーが最小限になり、ダイキャストマシンのダウンタイムをほぼ解消することができます。これにより、製造コストが削減され、製造プロセスが円滑になります。これが Ensenso N35 の実力です。

Ensenso N35 - 高速で高精度の 3D ビジョン