IDSプロダクトマネージャー Patrick Schick と、Nion 3D カメラおよびポイントクラウド

すべての人に3Dを

コスト重視の3Dアプリケーションを支える中核技術、Time-of-Flight

Nionは、IDSが自社開発した初の3Dカメラであり、3Dデータ取得へのコスト効率の高いエントリーモデルとして設計されています。したがって、Ensensoステレオビジョンカメラなど、高精度分野における既存のソリューションを補完する位置付けとなります。onsemiの深度センサーは、間接 Time-of-Flight(iToF)技術を採用しており、高解像度の深度データを提供するとともに、屋内・屋外を問わず、光条件が変化する状況下でも安定して動作します。この特長により、Nionは従来の高性能3Dシステムのような複雑さを伴わずに、堅牢な深度データが求められる産業用途に最適です。本記事では、IDSの3D Vision プロダクトマネージャー Patrick Schick(パトリック・シック)が、Nionの開発背景や技術的な判断、iToF技術の位置付けを説明するとともに、代表的なアプリケーション分野を紹介します。

NionによりiToF 3D分野へ参入するIDS

IDSは、Ensenso ステレオビジョンカメラを通じて、長年にわたり3D分野に取り組んできました。Nionは、このラインナップに新たに加わるエントリーレベルのTime-of-Flightカメラです。

Patrick Schick:「Nionを通じて、私たちは意図的に新たな市場セグメントへ参入します。最高レベルのデータ品質や深度精度が求められる用途では、これまで通りEnsensoが最適な選択肢です。Nionは、複雑な3D測定システムほどの精度は不要でも、安定した深度データが必要とされるアプリケーション向けに設計されています。手頃な価格帯で製品ラインナップを拡充し、実用的かつ柔軟に3Dを活用したいユーザーに新たな選択肢を提供します。」

3D画像処理におけるiToF技術の役割

間接Time-of-Flight(iToF)センサーは、変調された照射光と反射光との位相差を測定することで距離を算出します。この手法は、光パルスの伝播時間を測定する直接ToF方式と比べて、高い精度と解像度を実現します。iToFセンサーは、産業オートメーション、ロボティクス、3Dスキャンなどの分野で広く利用されています。

Patrick Schick:「私たちにとって、iToFは3D製品ラインナップを拡張する上で理にかなった技術です。高い空間解像度を持ち、動きのある環境でも安定して動作します。センサー外部での複雑な演算を必要とせず、リアルタイムで深度情報を生成できる点も特長です。これは、まさに多くの産業用途が求める『使いやすく信頼性の高い深度データ』です。」

Nionは、深度測定機能を内蔵した最新のiToFセンサーを採用

本システムに採用されているonsemiのHyperluxシリーズAF0130センサーは、1.2メガピクセルのXY解像度を備え、最大200 MHzの変調周波数により高い深度分解能も実現しています。さらに、iToF に必要な 4 枚の位相画像をセンサー内部で取得し、それらをまとめて読み出します。

Patrick Schick:「Hyperlux センサーは、複数の要件を同時に満たす点が決め手でした。1280×960ピクセルの解像度により、一般的なVGA ToFカメラの4倍のデータ密度を実現し、深度情報をセンサー内部で処理するとともに、周囲光の影響を効果的に抑制します。広範囲の変調周波数により、近距離から長距離のワーキングディスタンスまで対応することが可能です。その結果、さまざまなシーンで信頼性の高い結果を提供できるカメラとなっています。」

ダイナミックなシーンでも安定した深度推定

Nionの大きな特長の一つが、モーションブラーの少なさです。これは、物流分野、コンベア技術、回転部品を伴うアプリケーションにおいて特に重要です。モーションブラーは、深度値の不安定さを引き起こす原因となるためです。

Patrick Schick:「iToF センサーは、深度情報を得るために同一シーンの複数の位相画像を必要とします。多くのToFカメラでは、これらの位相画像を順番に露光し、センサーから個別に読み出します。その間にはわずかな時間差が生じます。もしその間に対象物が動いてしまうと、位相画像同士が完全には一致しなくなります。カメラは整合しない画像データから深度を算出するため、被写界深度全体にわたってぼやけた結果となってしまいます。Nionに使用されているonsemi Hyperluxセンサーでは、すべての位相画像をセンサー内部にバッファリングし、まとめて読み出します。これにより、露光はほぼ途切れることなく行われ、高速に移動する対象物であっても、画像の整合性と安定した深度値が確保されます。」

変化する照明環境下でも安定動作:屋内外での使用に対応

Nionは、屋内・屋外の両方での使用を想定して設計されています。これは、940 nm帯域に高い分光感度を持つiToFセンサーと、同波長帯のレーザー光を組み合わせているためです。

Patrick Schick:「Nionは940 nm帯域で動作するため、主に他の波長帯で発生する太陽光や多くの人工光源の影響を受けにくくなっています。これは、物流センターや生産現場、あるいは屋外エリアにおいて重要です。有効なデータを得るために、複雑な遮光設備や筐体を設ける必要はありません。こうした環境下でも、解析可能な安定した深度画像をそのまま取得できます。」

Nionの代表的なアプリケーション

Nionは、幅広い産業用途に適しています。距離、対象物のサイズ、動きが異なるさまざまなシーンにおいて、深度情報を提供します。汎用性の高いToFシステムとして、柔軟かつ堅牢な3Dスキャンが求められるあらゆる環境で使用できます。

Patrick Schick:「物流は非常に重要なテーマです。ここでは、業務を止めることなく、物体の検出、追跡、計測を行うことが求められます。このカメラは、サイズや距離に関係なく荷物や製品を検出し、移動中でも信頼性の高い結果を提供します。また、レベルモニタリングや在室検知といった用途も考えられます。多くの場合、既存の2Dプロセスを維持しつつ、必要に応じて深度データを追加することで、プロセス内の意思決定を強化できます。」

既存システムへの容易な統合

産業用途では、既存のソフトウェア環境への統合性が極めて重要です。NionはGigE Visionに準拠しており、IDSのソフトウェア環境に完全に統合されています。

Patrick Schick:「私たちは、一般的な産業用カメラと同じ感覚で使える3Dカメラを目指しました。NionはGigE Vision規格に準拠し、当社のIDS peakソフトウェアに完全対応しています。そのため、特別なニッチなソリューションを必要とせず、最小限の手間で既存のツールやアプリケーションに統合できます。さらに、他のIDS 2Dビジョンカメラと同様、IDS peak cockpitに完全に統合されています。これにより、3Dを導入する際の負担が大幅に軽減されます。」

高精度3D技術との違い

市場には、Ensensoのようなアクティブステレオビジョンなど、最高精度を誇る3Dソリューションが存在します。しかし、Nionは異なる用途を想定して設計されています。

Patrick Schick:「アクティブステレオビジョンのような高精度 3D 技術は、微細な形状、最大限の深度精度、そして複雑な測定作業において最適な選択肢です。Nionはそれとは異なるポジションにあります。使いやすさと統合の容易さを重視し、手頃な価格で信頼性の高い深度データを提供するように設計されています。ハイエンドの3Dシステムに取って代わるものではなく、極端な精度は不要なものの、信頼性の高い深度情報が求められる用途において、選択肢の幅を広げる存在です。」

3D製品ラインナップの今後の展開

Nionは、新たな3Dファミリーの第一弾として位置付けられています。IDSでは、さまざまな方向での拡張を計画しています。

Patrick Schick:「Nionの立ち上げにはあえて時間をかけ、プロトタイプの検証と多くのフィードバック収集を行いました。こうした経験は、今後の他モデルにも反映されていきます。より広い視野角を持つモデルや、マルチカメラ対応、追加機能を備えたバリエーションも考えられます。あらゆる要件に対応できる3D製品ラインアップを構築し、お客様のニーズに最適なソリューションを提供することが目標です。」

関連情報

  • Time-of-Flightを新たな次元へ – Nionの特長をご覧ください:製品情報ページへ
  • Nion 3Dカメラの可能性をご覧ください。onsemi Hyperlux 技術の特長をご紹介します。高解像度3Dデータの取得、屋外環境での安定動作、高速移動物体や要求の厳しいアプリケーションにおける高精度な結果をどのように実現しているかをご覧ください:動画を見る
IDS 社員 ヘイコ・ザイツ
Heiko Seitz
Product Marketing Manager

Dipl.-Ing. Heiko Seitz(工学修士 ハイコ・ザイツ)は2001年よりIDSで勤務しています。カメラソフトウェア分野での開発者としての経験を経て、現在はプロダクトマーケティングマネージャーとしてIDSの技術コミュニケーションを支援しています。彼の経験により、複雑な技術と実践的な知識伝達との間の隔たりを埋めています。例えば、技術記事、ウェビナー、あるいは講演などでその役割を果たしています。

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