安全な核廃棄物処理のための Ensenso 3D カメラ搭載のロボット支援システム

核施設の廃炉は、事業者にとって大きな課題が伴います。廃炉にしろ安全な封じ込めにしろ、廃棄対象の核廃棄物の量は世界中で驚くべき速度で増加しています。核廃棄物の処理への自動化の必要性が増していますが、核産業は安全性の理由から全自動のロボット制御法には腰が重く、危険な環境ではリモート制御の産業ロボットが好まれています。しかし、ジョイスティックやビデオ監視カメラの力を借りた、リモート制御の把持や未知の物体の切断などの複雑な作業は、制御が困難で、不可能な場合すらあります。

アプリケーション

展示会でつかみ取りマシンを試してみたことがあるなら、おわかりになるでしょう。つかみ取りアームの手動制御は単純です。うさぎのぬいぐるみを掴むのに失敗するのはご愛敬ですが、放射性廃棄物の処理の場合、失敗すると大きな影響があります。人間や環境に重大な影響をもたらす存在を防ぐため、ロボットはシーン内の放射性物質を極めて高い精度で検出し、精密に操作できなければなりません。オペレーターは文字通りロボットを手にとり、正しい把持位置を判定するのはオペレーターの責任です。

放射性環境での Extreme Robotics Lab の 3D ビジョンガイド付き半自律型ロボットによる金属物の切断
放射性環境での Extreme Robotics Lab の 3D ビジョンガイド付き半自律型ロボットによる金属物の切断

ソフトウェアのサポートにより、Enseno 3D カメラはオペレーターによる奥行き情報の認識と評価を実行するので、認識負荷は大幅に削減されます。支援システムには、把持対象の物体の触覚特性と、特殊な把持アルゴリズムが組み合わされています。「システムではシーン群を使用して、複数の安定した把持位置を自動的に生成します。

3D カメラが取得する点群は高解像度で稠密なので、シーン内の各物体に対して非常に精度が高い把持位置を生成できます。

— National Centre for Nuclear Robotics の上級リサーチサイエンティストである Naresh Marturi —

これをベースとして、私たちの「仮説ランキングアルゴリズム」は、次に取り上げる物体を、ロボットの現在位置を基準に判定します」と、National Centre for Nuclear Robotics の上級リサーチサイエンティストである Naresh Marturi 博士は説明します。

図: (c) Extreme Robotic Lab
図: (c) Extreme Robotic Lab

原理は、他のスティックを動かさずに 1 本のスティックを抜き去るスキルゲームの Mikado と似ています。決定されたパスのガイドにより、ロボットはスムーズに、目的のパスに沿ってターゲットの把持位置まで均一に移動できます。ナビゲーションシステムと同様に、オペレーターがロボットアームを安全に把持できるよう案内し、必要に応じて、他の未知の危険な物体を回避するよう支援します。このために安全な経路を計算し、オペレーターが触覚フィードバックによって経路を外れないようにサポートします。

システムはオペレーターの自然な手の動きを正確かつ確実に、対応するロボットの移動にリアルタイムでマッピングします。オペレーターは常に手動制御を維持し、コンポーネントが失敗しても制御を引き継げます。AI をオフにして、「強制フィードバックモード」を有効にして人間の判断に戻すだけです。人間と機械との共有制御の原理により、常にシステムを制御下に置くことができ、これは危険度が最も高い環境で重要な点です。

ロボット工学上級リサーチサイエンティスト Naresh Marturi 博士 - ロボット工学研究エンジニア Maxime Adjigble 氏
ロボット工学上級リサーチサイエンティスト Naresh Marturi 博士 - ロボット工学研究エンジニア Maxime Adjigble 氏

今後の予定

バーミンガム大学の Extreme Robotic Lab は現在、並行ジョーグリッパーではなく、多指ハンドを使用できるように、手法の拡張を開発しています。これにより、複雑な物体を把持する際の柔軟性と確実性が向上します。将来的には、オペレーターはリモート制御されたロボットのどの指を使用して物体をつかんでいるか、力を感じられるようにもなります。完全自律型の把持手法も開発中で、ロボットアームは AI で制御され、自動ビジョンシステムがガイドします。チームは、人間とロボットの協働を改善してリモートロボットを「共有制御」システムで制御する可視化ツールにも取り組んでいます。

これは私たち全員の安全と健康にとって有望なアプローチです。結局のところ、核廃棄物などの危険物の処理は、私たち全員が懸念する問題だからです。該当する物体情報を確実に取得する Ensenso 3D カメラは、この世界的に緊急度が高まっているタスクに重要な働きをします。

Ensenso N35 - 高速で高精度の 3D ビジョン

IDSのエンセンソNシリーズ。
バーミンガム大学