未知の物体をピッキング
物流における堅牢で柔軟なロボットオートメーション
世界的なパンデミックはサプライチェーンおよび物流業界に大打撃を与え、一刻も早いロボットオートメーションの導入が必要とされるようになりました。物流倉庫での作業員の 70% 以上がピッキングとパッキングの専従となっているため、多数の企業が物流のオートメーションへの投資を徐々に進めています。しかし、ロボットが無数の (未知の) SKU を処理するとなると、事態はどのようになるのでしょうか。このような企業には、多種多様な物体のピックアンドプレースを自動化する、高速で堅牢な、信頼性の高い手段が必要になります。
この課題にオランダの企業 Fizyr が取り組み、解決に成功しました。同社はデルフトに拠点を置くコンピュータービジョンの会社で、過酷な物流環境でも、未知の物体をロボットにピッキングさせることに集中して取り組んでいます。その結果、ピッキング、小包搬送、デパレタイズ、トラックの荷下ろし、手荷物搬送など、さまざまな条件や用途において物流オートメーションを実現する、自動化されたビジョンソリューションが誕生しました。最適なハードウェアでシステムを補完するため、Fizyr はコンパクトで丈夫な Ensenso 3D カメラを、IDS の高性能 GigE uEye カメラと組み合わせて統合しました。
用途
市場の多くの同業他社のように独自のピッキングセルを提供するのではなく、Fizyr は、どのシステムともスムーズに組み入れられるプラグアンドプレイ形式のモジュール型ソフトウェア製品を作成しました。組み入れる側は、ピッキングセルに最適なハードウェア (コボットや産業ロボットなど) を自由に選択できます。コスト、耐久性、速度の最適化の面で、IDS はカメラの選択において望ましいパートナーです。本質的に、カメラはピッキングまたは仕分けされる製品を視覚的に確認します。顧客の個々の用途に応じて、最大 4 台の Ensenso 3D カメラを強力な GigE uEye CMOS カメラと組み合わせて使用します。
IDS 産業用カメラを統合すると、Fizyr のソフトウェアアルゴリズムに必要な、信頼性の高い精細な画像を撮影できます。物体を個別に扱うための仕分けを含む、毎秒 over 100 を越える把持姿勢が得られます。このソフトウェアは品質管理も行います。自動システムの鋭い目となる IDS カメラの力で欠陥を検出して、破損した物品が仕分け機に流れ込まないようにします。
これらのアルゴリズムでは、セグメント化に関するすべての関連情報や、荷物の種類 (箱、袋、封筒、チューブ、円筒、変形可能など) の仕分けに関する情報を提供できます。システムは、規格外または搬送できない品物 (破損した商品)、6 DoF (自由度) での最適な把持姿勢、物体ごとの多段階の姿勢を認識します。センサーやロボットは、上下左右に重なる部分が多い物体、反射が強い物品やポリ袋入りの衣料品、白地に白や黒地に黒の封筒、透明な物体を処理できます。
ステレオビジョンの品質はシーンの照明条件と物体表面のテクスチャに直接左右されるので、対応する点の検出と座標の計算は、テクスチャ情報が少ない面や反射面では非常に困難になります。このような高い要件に対応するため、Fizyrs が最初に顧客ソリューションに選んだのは、IDS ポートフォリオのカメラモデルでした。そこではタスクはうまく分割されます。uEye GigE CP カメラは物体の 2D 画像を撮影して、Fizyr のアルゴリズムの入力として提供し、カメラで物体の仕分けに進みます。物体は未知のものでもよく、さまざまな形状、サイズ、色、素材、重なり方に対応できます。その後 Ensenso カメラは点群マップを作成し、Fizyr のソフトウェアは 2D 画像から得た情報とこれを組み合わせて、点群の表面を分析してグリッパー (複数の場合もあり) に適した把持姿勢を取得し、最適な姿勢を提示します。各種素材の表面を明確に表現することは、アルゴリズムの重要なコンポーネントであるため、大切です。IDS の Ensenso 3D カメラなら難なくこなします。技術を追加して従来のステレオビジョンの原理を改良し、奥行情報の品質を改善させて、測定結果の精度を向上させました。
厳しい照明環境でも、未知の小包をシステムは確実に切り分けます。
カメラ
具体的なカメラモデルや、システムごとのカメラ数は、顧客の個々の使用例によって異なります。コボットを利用する代表的なビンピッキングソリューションの場合、1 台の Ensenso N35 を GigE uEye CP と組み合わせて使用しますが、1 台の Ensenso X36 と GigE uEye CP をビンピッキングに使用し、4 台の Ensenso N35 カメラを他のビンへの物品の積み込みに使用するクライアントもあります。
推奨される uEye CP は「Compact Power」を示し、小型ながら、あらゆる種類の産業用途に対応するパワーを備えています。多彩なピクセル前処理で機能を最大限に発揮し、内蔵 120 MB 画像メモリの活用により、マルチカメラシステムにも最適です。カメラは GigE のフル速度でデータを転送し、PoE (Power over Ethernet) を介して 100 m まで 1 本のケーブルで動作できます。
UI-5240CP-C-HQ Rev. 2 は e2v 1.3 メガピクセル CMOS センサーを搭載した、とりわけ強力な産業用カメラです。IDS 製品シリーズの中でも感度の高いセンサーで、ここで使用したカラーバージョンに加えて、モノクロと NIR のバージョンを用意しています。卓越した光感度の他にも、多岐にわたる特徴的な機能を備えており、要件や環境条件が変化しても非常に柔軟に対応できるセンサーとなります。
「Fizyr では通常システムごとに 1 台のカメラを使用します。大抵は uEye カメラで、Ensenso N35 および X36 と組み合わせていますが、制限はありません。Fizyr でのこれまでの最も一般的な使用例は、システムごとに 1 台の uEye と 1 台の Ensenso です」と Fizyr の CEO、Herbert ten Have 氏は明かします。
使用できる他の Ensenso モデルには 1 つの共通点があります。集光性の高いプロジェクターを配置し、パターンマスクを使用して、暗い環境でも被写体の表面上のテクスチャを高コントラストで照らします。投影されたテクスチャは、コントラストが弱い、または存在しない被写体表面の構造を補います。このため、この原理は「射影テクスチャステレオビジョン」とも呼ばれています。詳細度の高い視差マップと、完成度が高く均質なシーンの奥行情報が得られます。
多岐にわたる機能により、両方の 3D カメラモデルを、3D 物体認識、分類および位置決め (品質保証、試運転)、物流オートメーション (パレタイズ/デパレタイズ)、ロボット用途 (ビンピッキング)、8 m³ までの物体の撮影 (パレット)、自動保管システムなど、サプライチェーンや物流業界での要求の厳しい多様な用途に利用できます。
Fizyr は先進的で高速なラッパーを使用して Ensenso SDK をソフトウェアに統合しました。主なメリットは 2D/3D の組み合わせで、2D カメラからの画像をオーバーレイとして 3D 点群上に配置できますこれによってシーンをさらに鮮明に表現できます。
一方で、「ハンドアイ校正」を利用してカメラ画像をロボット座標系に最適に調整し、ターゲットを絞った把持を実現できます。
今後の予定
e コマースの堅調な成長により、大型化したパッケージの需要が増加しました。同時に、世界的なパンデミックから生じる制約により、稼働できる作業員が減少し、企業間で物理的な距離を緊急に取る必要が出てきました。このような課題を解決するため、ロボットオートメーションの導入を進める企業が増え、人工知能とマシンビジョンが担う役割が重要になってきました。同時に、コストが削減され、職場での安全性も増加します。
最新の自動ピッキングセル向けの高品質モジュールのニーズは、世界的に拡大しています。ソフトウェアおよびハードウェアコンポーネントに対するシステムインテグレーターの要件も、同様に増加しています。Fizyr と IDS のソリューションには、次の利点があります。
- プラグアンドプレイソリューションとして、どのシステムにも容易に統合できる
- ハードウェアに依存しないため、顧客はオーダーピッキングシステムをいつでもニーズに合わせて自由に調整できる
- 堅牢、精密、柔軟で使いやすい 3D ビジョンシステムを搭載し、常に最適な物体情報を提供する
このすべてが、自動化された「Good-To-Person」システムの将来を確かにするために、欠かせない要素です。
Ensenso N 35: 高速で高精度の 3D ビジョン
コンパクトで頑丈なアルミニウム製ハウジングを備えた Ensenso N35 3D カメラは、トリガーとフラッシュ向けのロック可能な GPIO コネクターと GigE コネクターを装備し、2 台のモノクロ CMOS センサー (グローバルシャッター、1280 x 1024 ピクセル) とプロジェクターを搭載しています。Power over Ethernet によって、長いケーブルを使用したデータ転送および給電が可能です。FlexView 技術が搭載されているため、N35 モデルは特に静止物体の 3D 撮影に適しています。動作距離は最大 3,000 mm です。
Ensenso X36: モジュール型 3D カメラシステムで実現
Ensenso X36 3D カメラシステムは、プロジェクター装置、1.3 MP または 5M センサー (CMOS、モノクロ) 搭載のの 2 台の GigE uEye カメラ、取り付けブラケットおよび調整角度、レンズ 3 枚で構成されています。カメラをプロジェクター装置と接続するための同期ケーブルとパッチケーブルも付属しています。FlexView 技術により、空間分解能が向上し、暗い面や反射面でもシステムは非常に高い確実性を発揮します。
クライアント
Fizyr は、過酷な物流環境における自動化されたピックアンドプレース向けの、世界最高レベルのビジョンソフトウェア製品を設計、構築、インストール、保守しています。学習アルゴリズムを使用して、さまざまな形状、サイズ、色、素材、重なり方の未知の物体を、(搬送された) バルクから取り上げて自動的にハンドリングできます。Fizyr の製品は、大手システムインテグレーターやエンドユーザー、オンラインショップ、ウェアハウジングおよび小包サービスにより、世界中の現場で利用されています。
www.fizyr.com